もう6年位前になるんですかねー。
地元の大学との共同研究開発で、身体障害者向けのPC用キーボードを開発し、特許まで取得した事があります。
特許自体は業務内での発明なので会社に帰属しますが、権利を行使する(例えば製品化するとか)際には、発明者としてそこに携わった人たちの承諾が必要です。
今の所、前の会社からは権利行使の相談が無いところを見ると、残念ながら塩漬けにされているのでしょう。
実は、その製品の着想を得た時、MicrosoftのWordを駆使して資料を作成し、様々な機関や専門家に相談に行きました。
しかし、そこで返ってくる言葉は
『そんなの、もう誰かが作ってるんじゃない?』
『そんなニーズって本当にあるの?』
『プロトタイプ作るだけでも下手したら数億円掛かるよ?』
とネガティブな内容ばかりです。
そんな事ばかり言われ続けてきましたが、僕の心の中では
『じゃあ、作ってる人と物を見せてよ』
『見ても触っても無い物の良さが何で分かるんだよ』
『その根拠は何だよ』
と思い続けていました。
誰も見た事が無いにも関わらず、否定から入るという思考回路が、僕には理解できませんが、先ずは安く作ってくれる人か組織を探さないといけません。
僕は、製造メーカーを引退された技術系の方や、福祉機器を製造する会社など、片っ端から連絡を入れてみました。
もちろん、パクられるリスクもありますが、信じて進むしかありませんよね。
色々とネットで探す内に、ある福祉機器に関わる論文に出会い、そこに名を連ねてる方の一人に目を付けて連絡をしました。そうして出会ったのが元Panasonicの技術者で、自らも手を使わずに操作できるリモコンを開発したとおっしゃる方です。
福岡市博多区在住のその方の元へ、ソニックで向かいました(元Panasonicなだけに)。
お話を一通り聞いて頂いた後、自ら考案したというリモコンのプロトタイプを見せてくれたのですが、実用化される事無かったそうで、ダイニングに置かれた普通の箪笥の引き出しから出てきたソレの、開発に掛かった費用はなんと1,000万円。。。
正直なところ、1,000万円の代物には見えないチープなプラスチック製のリモコンだったのを覚えています。
『こ、こ、これが1,000万円。。。』
愕然としたのを覚えています。
今回は期待していた事もあり、手土産を奮発していましたが、その時はちょっと後悔してしまいました。。(すみません。。)
しかし、帰り際になって、その方がキラーワードをくれたのです。
『それ、産学連携でやったら面白いんじゃない??』
『産学連携ですか、、、?』
『そうそう。工学部のある大学に、一回話を持っていくと良いよ。』と。
僕は45°でお辞儀をしてからご自宅を後にし、ソニックの中で大分県内の大学を調べまくりました。
すると出るわ出るわ。
『工学部ってこんなにメジャーな学部なんだねー』と、大学に行ってない自分からすると意外でした。
大学に設置されてる産学連携の窓口に電話すると、直ぐに面会の設定をして下さり、あれよあれよという間に教授会で承認され、晴れて産学連携がスタートしたのです。
それから開発まではおよそ二年。
掛かった費用は年間11万円の契約金+実費(旅費など)です。
『数億掛かるって言ったやつ誰やったかなー』とか思いながら、様々な賞を頂きました。
要するに、
『そんなん、ニーズある?』とか、
『もう、誰かやってんじゃない?』って言われること程、新たな市場だと思うんですよね。
ついつい、『儲かってる所を真似』したくなりますよね。 それに、『〇〇ってこうだよね』というセオリーに乗っかりたくなりますよね。
でも、新たな市場ってそこじゃないですよね。
最初の一歩にはとてもエネルギーが必要です。
なかなか思い通りに進みませんし、色んなことを言われます。
でも、『これは絶対にニーズがある』と強い確信を持って誰かが進まないと、新たな市場って開拓されないんですよね。
そのリスクを負ってるのが、経営者という訳ですね。