テスラCEOのイーロン・マスク氏の個人資産が、トヨタ自動車の時価総額を超えたという事が話題になってます。
ちょっと桁が違い過ぎて意味が分からなくなりそうですが、イーロン・マスク氏の個人資産が、外国の国家予算に匹敵する30兆円規模になったとも報じられています。
子供たちからすると、
『30兆円もあれば何でも買えるじゃん!!』と思ってしまうかも知れませんが、それはそうとも言えない理由があります。
それは、現状ではイーロン・マスク氏の銀行口座や手元に ”現金” が入って来てる訳ではないということです。
今日は、そこを少し書いてみようと思います。
株式会社の仕組み
イーロン・マスク氏は、創業時にテスラモーターズを株式会社として株式を発行し、現物や現金で出資する事によってその分の株式を手にしています。
その時、創業時の株式発行数と株価は、オーナーである社長が決める事ができます。
例えば1株当たり10,000円として1,000株発行とすれば、資本金は10,000,000円。
その時、株式は市場(取引所)に出ていません(非上場)ので一般投資家はその会社の株を買う事がまだできません。
なので、大抵の場合、ここでは共同創業者や技術担当者など、チームメイトにも株主として出資をしてもらう事で、より多くの資金を調達する事になります。
株式は、より多く持っている人が、より多くの議決権を持つ事となっています。
そこでもし、会社の方向性を決めるのに取締役会を開いたとしても、2人の株主が50%ずつ持っていた場合に意見が割れると大変ですよね。
イーロン・マスク氏が、本当にお金持ちなのかは分からない?
では、時価総額とは一体何を指すのでしょうか?
『資産30兆円はすげーなー』というのはそうなんですが、さっきも書いた様に、手元に30兆円もの現金がある訳では無いので、車屋さんに行っても車は買えません。
イーロン・マスク氏が車を買おうと思った場合、先ずは資産である保有株を売却する必要があります(現実的には、その場でフェラーリ買える位の現金は持ってるでしょうけど)
要するに、資産と言われる株式や不動産というのは、売買が成立して初めて現金化でき、そこで初めて別の事にお金を動かす(投資する)事ができるのです。
さて、イーロン・マスク氏は、本当にお金持ちなのでしょうか。
答えは、条件付きで『YES』です。
条件?
先述したように、資産は売却して初めて現金になります。
そして、ここが重要なのですが、その ”資産価値” については、市場で常に上下しているのです。
例えば、イーロン・マスク氏が時価総額1株1,000,000円のテスラ株を、100,000株持っていたとしましょう。
そうすると、彼の資産は株式だけで100,000,000,000円(一千億円)となり、ます。
しかし、テスラ株は株式市場に上場している為、毎日売買されています。
そこで働くのが市場の原理と言われるものです。
1株1,000円の株が100株売られてたとしましょう。
その会社が『新商品を出すかも知れない』という期待感があれば、1株1,200円でも『買いたい』という人は現れます。
しかし、製品に欠陥が見つかったり、部品の仕入れが遅れるなどで製品が作れないとなると、その会社は製品が作れませんから売り上げを伸ばせません。
そうなると、株価は1,000円を割り込む事になり、500円にも100円にも、はたまた紙切れになる事だってあり得るのです。
要するに、市場がその会社の株式を『1,000円の価値がある』と認めているからこそ1,000円で売買されるのであり、『1,200円の価値がある』と認められれば1,200円で売買されるのです。
それこそが ”時価” なので、それの総額が ”時価総額” となるのです。
なので、短期的には原則的に考えられませんが、中長期で見ればテスラ株が何らかの理由で暴落する事だってあり得るのです。
イーロン・マスク氏は、投機目的(短期で売買して利ザヤを稼ぐ)で株式を保有している訳ではありませんので、どんな状況でも株を手放す事は無いでしょう。
そして、シンプルに理解して貰いたいのが、
『欲しいという人が多ければ価値が上がる』
『要らないという人が多ければ価値は下がる』
という事です。
今はテスラ株が人気(欲しいという人が多いので価値が上がってる状態)です。
要するに、イーロン・マスク氏がその株式の価値について、直接的にどうこうする事はできません。
しかし、新製品を開発したり、新たなモデルの量産体制を整えたりすることは、経営者判断しかできません。
その事が投資家から好感を得たり、批判を買う事で株価が上下する事を理解しておきましょう。
まとめ
今回の記事で、現金と資産との違いは理解して貰えたでしょうか?
単純に言うと、現金で物は買えますが、資産で物は(売却しないと)買えません。
そして、超極端な話になりますが、資産の時価総額は翌日に半減する事もあれば、倍増する事もあるという流動的な価値であるという事。
そして、その価値は経営者ではなく、投資家が判断しているという事です。
会社のオーナーは、あくまで株主(出資者)であり、創業家でも社長でもありません。
社長は、会社の価値を上げる事が仕事なのです。
世の中には、1,000円で買った株を1,200円で売り抜けて、差額の利益で収益を出して生活している人も居ますし、それを仕事とする投資ファンド会社もあります。
世の中のお金の流れや仕組みを理解すると、そのものの本質が見えてくるかも知れませんね。
*1:※身内や友人など、身近な人が『出資したい』と名乗り出れば株を買う事ができますが、取締役などの役員に選任されるかどうかはまた別の話なので、選任されなければただの株主という事になります。
*2:※株式の場合、ストックオプションという方法があり、給料などの報酬の一部を現金の代わりに株式で支払ったり、売上に比例する形で報酬を支払う事が出来る様に、オプションを設定する事ができます。この場合、1株1,000円分として受け取った株式が、将来上場する事で1株20,000円になるという事も。。
*3:ここで少し余談ですが、株式会社であっても社長一人しか居ないという会社もあります。
その場合は、社長であり、持ち株比率100%の出資者となりますから、会社のオーナーであり社長という事になります。