平凡が一番難しい

小さな会社を経営していて感じることを、ぼそぼそと書いています。

障害者の就労支援について考えてみる

秋雨前線の影響をモロに受け、洗車ができない日々が続いておりましたがここにきて漸く雨も落ち着きました。

 

その間も、自動販売機のジュースと店頭の野菜は順調に売れていたのが救いですが、やはり雨の日にいかに収入を得ていくかは今後の課題ですね。。

 

 

さてさて、

 

皆さんは障害者の就労支援と聞いて、どんなことを思い浮かべますか?

 

僕が、「就労継続支援B型やります!」というと、大抵の方が

 

①あれって国からの補助がでるんでしょ?

 

②そもそもどんな仕組みなの?

 

③A型とB型って何が違うの?

 

というご質問を多くいただくので、ちょっとだけご説明します。

 

 

先ずは

 

①国からの補助 について

 

単刀直入に言うと国からの補助は出ません。

先ず初めに、障害者就労継続支援事業所として事業を実施する為には、各都道府県知事より指定を受ける必要があります。

 

その為には、人員、作業所のスペース、トイレなどの設備、消防法に関わる設備基準などを満たしている必要が有り、それを書類にて証明する事で審査が始まります。

 

それをクリアすると、管轄は市町村に移管します。

 

指定申請は都道府県に行いますが、財源は市町村となります。

 

そして、利用者さん(障害者手帳をお持ちの方)が月当たり何日通所したかを申請し、その日数に応じて事業所運営費という形で地方自治体から給付金が支給されます。

これはあくまで、事業所を運営する為の費用にあてるようになっていて、利用者さんの工賃(いわゆる給料)としての支出は禁止されています。

 

ですので、開所すれば国からの補助で安定的に運営できるというものではなく、あくまで利用者さんが利用してくれて初めて給付金が支給されるので、通ってもらえる様、企業努力は欠かせません。

 

②そもそもどんな仕組みなの?

 

就労継続支援事業には大きく分けて3つあります。

 

継続支援A型、継続支援B型、移行支援。

 

A型は、雇用契約を結び、最低賃金を保証する。一般就労へ向けた実務に近い形での訓練を行う。

 

B型は、雇用契約は結ばず、最低賃金の保証はなし。一般就労やA型事業所への通所が困難な方が利用する。

 

移行支援は、最長2年間の施設利用が可能で、一般就労又はA型への移行に向けた訓練を行う事が目的。

 

SICが行う事業は、2番目のB型作業所で、一般就労やA型に定着できなかった方が対象となっています。

 

③A型とB型って何が違うの?

 

これは先程も述べた通り、雇用契約の締結の有無と最低賃金保証の有無が大きな違いとなります。利用する側としては、最低賃金が保証されてる方が、収入面では安定するのでA型の方が “人気” となっています。

 

ということで、これらを踏まえて題名に沿って考えてみたいと思います。

 

 

何故、SICが “人気のA型” ではなくB型で挑戦する事になったかというと

一つが事業所運営の安定で、二つ目が利用者さんの目標が設定しやすい

という点にあります。

 

先ずは事業所運営の安定について説明すると、

僕自身、実は5年前からA型事業所の運営は難しいと言い続けていました。

 

それは何故かと言うと、先述したようにA型では雇用契約の締結と最低賃金の保証が求められます。

 

という事は、要するに一般就労(いわゆる健常者)と同じ生産性を確保しなければならないということ。 厳しい様ですが、現実的に一般就労者と同じ生産性を求める事は容易ではありません。 もちろん、障害者の適正と業務内容が合致して、生産性を確保できている事業所も沢山ありますが、それでも決して容易ではありません。

 

では何故A型事業所は増え続けたのでしょうか?

 

それは、利用者さんの確保が容易に出来るからです。

 

利用者さんが施設利用さえしてくれれば、事業所の収入は増えますし、安定します。

なので、これまでは障害者の生産能力で自分の収入分を確保できていなくても、事業所の収入である給付金から、足りない給与分を賄っていたというのが現状です。

 

事実、障害者総合支援法では以前よりこれを禁じていましたが、暗黙の了解というべきか、目を瞑っていたというのがこれまでの現状です。

 

しかし、僕は目を瞑っている状態というのは正常ではないという考えから、遠くない将来に淘汰される時が来ると感じていました。

 

それが、今年の法改正で現実となりました。

 

生産性の高い業務を準備できていない事業所は、労働時間を減らす、またはB型への業種転換を始めたのです。

 

これこそ、事業の安定とは程遠い運営としか言いようがないと思います。

 

A型開設→利用者が集まる→事業収入が安定する→生産性が足りない→事業収入から賄う→でも利用者さん来てくれるから何とかなる

 

という構図が出来上がっていました。僕はこれを安定とは見ていません。

 

そしてもう一つが、利用者さんの目標設定が明確になるという部分です。

 

B型では、工賃(いわゆる利用者に支払われる給料)の設定が自由にできます。その為、その制度を悪用しようと思えば容易にできてしまうという側面もあります。

 

実際に、時給50円程度に設定し、月額工賃が5,000円だとか8,000円というところも存在します。

 

利用者さんは、毎月施設利用料を支払う必要がありますので、手取りが2,000円や3,000円となっていたのが現状です。

 

それでも、「毎日通える場所があるだけで良い」「少しでも給料がもらえたら良い」という理由で、それを良しとされてる方ももちろんいます。

 

それはそれで、本当に良いと僕は思います。

 

しかし、毎月20日も25日も働いて、手元に2,000円しか残らなくても本当に良いのでしょうか。

 

「今月は頑張った!!」と思っても、そもそもの工賃設定が低ければ、跳ね返りも低くなります。

 

これでは、頑張りを実感できないと思うんです。そうなると、次の目標すら設定しなくなりますし、する必要がなくなってしまうと思います。

 

最低賃金の保証のA型からスタートすれば、利用者さんは集まるかも知れません。

しかし、頑張りを評価すればするほど、賃金を上げたくなるのが経営者です。

だとすると、更に高い生産性を求めなければなりません。

 

それよりも、一つ一つのステップを評価できる仕組みをつくり、それを評価する仕組み、目標を明確にできる仕組みこそが重要だと考えています。

 

「B型事業所は一般就労へは遠回り」というのがこれまでの定説です。

 

しかし、それを打開するのがSICの役割だと思っていますし、それを理念としています。

 

工賃は低いところからのスタートかもしれません。

 

しかし、上は青天井です。

 

一人でも多く、一般就労に結び付けていく。

 

これを使命としています。

 

ですので、幅広い業種業態を準備しているのです。

 

洗車を含め、屋外作業は骨が折れます。

 

しかし、作業工程が細かく設定されているので、自分の能力や体調によって作業を選択できるようにしています。

 

今日は3台頑張ったから、明日は4台に挑戦しよう。

 

「僕は仕上げ作業をマスターしよう」「私はホイール洗浄をマスターしよう」という様に、それぞれが目標を持って取り組む。そして、それを指導員と共有して、指導員はそれを正確に評価する。

 

SICは取引企業さんとは直接契約をしています。

 

利用者さんと、提携企業さんに訪問し、作業を一緒にします。

 

気持ちの良い挨拶。テキパキとした行動。正確な作業。

 

これを、提携企業の社長さんに直接ご覧頂く為です。

 

これこそ、一般就労への近道だと考えていますし、定着への近道だと思います。

 

施設内就労も大事な役目を持っています。

天気が悪い日の作業確保や、発注元の企業さんからの作業が山積みだからです。

 

ただ、会社の中だけで作業は終わりません。

 

納品などには必ず同行して貰うようにします。

 

SIC合同会社の就労継続支援B型は、A型とB型の間、就労移行支援とB型の間を狙っています。

 

それぞれの名称に囚われることなく、B型作業所の常識を覆す事業所を目指しています。